確認書
医学部の不当な学生処分に端を発した東大紛争末期の1969年1月10日、のちに安田講堂に籠城することとなる新左翼系全共闘を除く大部分の学生と加藤総長代行(当時)以下大学当局との間に、秩父宮ラグビー場で会談が開かれました。ここで結ばれた「東大確認書」(七学部集会における確認書)は、従来の「大学の自治=教授会の自治」という立場を否定し、学生や職員を含めた「全構成員自治」を定めたものです。なお、原文は、細分化された項目(二十六項目)ごとに別紙となっており、それぞれの項目ごとに署名がおこなわれていますが、ここでは便宜上、各項目の末尾に、学生側代表の署名の状況を、カッコに入れて記しました。カッコ内に「全部」とあるのは、七学部(法・工・理・農・経・教養・教育)、二学科(教養学部の教養・基礎科学の二学科)、五系(理・農・教育・薬・社会の各院)を意味します。
七学部集会における確認書
一 医学部処分について
1. 大学当局は、次の点を認め、この処分が白紙撤回されたものであることを再認識する。(1)日本の医療制度をめぐって、医学教育および医師研修制度の改革を要求した医学部学生の運動に対してこの処分が妨害的役割を果たし、その結果として、いわゆる政治的処分の意味を持ったこと。 (2)この処分が、本人からの事情聴取の手続きをふまず、「紛争」中にその一方の当事者である医学部教授会のみの判定でそれを正当化する十分な理由なしに一方的に行われたこと。
(全部署名)
(全部署名)
(基礎科学科のみ不署名)
(全部署名)
二 文学部処分について
大学当局は、この処分が従来の「教育的処分」という発想に基づいて行われた点において、旧来の処分制度への反省の契機となったことを認め、新しい処分観と処分制度のもとで再検討する。(全部不署名)
三 追加処分について
1. 昨年一月二十九日以来の闘争の中で行われた学生・院生のストライキをはじめとした抗議行動については、大学側に重大な誤りがあった以上、大学当局は処分の対象としない。(全部署名)
(全部不署名)
四 今後の処分制度
1. 新しい処分制度については、今後相互で検討する。ただし、大学当局は、その原則として、客観的に学生・院生の自治会活動へ規則手段としての役割を果たしてきた「教育的処分」という見地をとらぬこと。また、学生・院生の正当の自治活動への規則となる処分は行わないこと、且つ、その手続きにおいては、一方的処分はしないことを認める。(全部署名)
(経のみ不署名)
五 警察力導入について
1. 大学当局は、六月十七日の警察力導入が、講堂占拠の背後にあった医学部学生の要求を理解し、根本的解決をはかる努力をつくさないままに、もっぱら事務機能回復という管理者的立場にのみ重点をおいてなされた誤りであったことを認める。(全部署名)
(経・工のみ署名)
(全部署名)
(法・経・工・教養学部のみ署名)
六 捜査協力について
1. 正規の令状に基づいて捜査を求めた場合でも大学当局は自主的にその当否を判断し、その判断を尊重することを警察に求めるという慣行を堅持する。また、警察力の学内出勤の場合もこれに準ずる。(全部署名)
(全部署名)
七 青医連について
大学当局は青医連を正規の交渉団体として公認する。その詳細については医教授会と医学生・研修医が今後検討するものとする。(工のみ不署名)
八 「八・一〇公示」について
大学当局は、「八・一〇公示」を昨年一二月三日に「大学問題検討委員会」を廃止した時点で、完全に廃止されたものと認める。(経・工・基礎科学科・教養学科のみ不署名)
九 学生・院生の自治活動の自由について
1. 大学当局は、各学部の学生自治会組織と東京大学学生自治会中央委員会、各系の院生自治組織と東京大学全学大学院生協議会を公認する方針をとる。(法・経・工のみ不署名)
(法・経・工のみ不署名)
(全部署名)
(全部署名)
(工・基礎科学科のみ不署名)
十 大学の管理運営の改革について
1. 大学当局は、いわゆる「東大パンフ」を廃棄する。(全部署名)
(法・経・理・工のみ不署名)
(理のみ不署名)
(法・経・教養・基礎科学科のみ不署名)
注:矢内原三原則
学内ストライキの決議を、代議員大会で「提出したものは退学とする」、「議題として受け取った議長は退学する」、「行った自治会委員長は退学とする」というもの。